耳鼻咽喉科展望
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臨床
視力障害をきたし手術加療した副鼻腔疾患の臨床的検討
高石 慎也穴澤 卯太郎結束 寿蓮 琢也吉村 剛田中 康広
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2014 年 57 巻 1 号 p. 15-22

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抄録

 2011年4月から2013年3月までの2年間に獨協医科大学越谷病院耳鼻咽喉科において, 視力障害をきたし手術加療した副鼻腔疾患5例を経験したので, 文献的考察を加え報告する。5例を原因別に分類すると, 副鼻腔嚢胞への感染を契機とした鼻性眼窩内合併症2例, 副鼻腔の炎症が骨壁の間隙を介して視神経へ波及したと考えられる鼻性視神経炎2例, 後部副鼻腔嚢胞による鼻性視神経症1例であった。5例中4例は, 手術により発症以前の視力まで回復したが, 後部副鼻腔嚢胞の1例では視力の改善を認めなかった。視力障害が重度の場合, 緊急に副鼻腔手術を施行したとしても, 視力の改善なく不可逆性の障害をきたすことがある。そのため, 仮に後部副鼻腔嚢胞が健診や他科の画像検査で偶然発見された場合, 病変進展の程度によっては無症状であっても積極的な治療を検討すべきと考える。また, 鼻性視神経炎の術後経過をみるうちに, 1度は回復した視力が再度低下をきたし, 2度目の視力低下の機序が癌の転移であった症例も経験した。副鼻腔疾患の手術既往があり, 視力低下をきたした症例でも, 既往歴や合併症を考慮に入れ, 画像検査もあわせて鑑別を行い, 他疾患が原因である可能性も常に考えて診療に臨むべきである。

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