耳鼻咽喉科展望
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臨床
頬粘膜吸引後のニコルスキー現象により診断された尋常性天疱瘡の1例
結束 寿海邊 昭子穴澤 卯太郎田中 康広
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2014 年 57 巻 2 号 p. 87-93

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抄録
 症例は66歳女性。 2週間前より咽頭痛を認め, 近医にて抗菌薬の内服治療を受けるも改善せず当科を受診した。 初診時に口腔および咽喉頭に多発する異出血性のびらんを認めた。 感染に続発する粘膜病変を疑い外来にて抗菌薬の点滴治療を施行したが, びらんは依然として残存した。 各種ウイルスの抗体検査は陰性で培養検査も常在菌のみが検出され, 感染性の粘膜病変は否定的であった。 頬粘膜のニコルスキー現象が陽性であったため天疱瘡を疑い, 病変部より生検を施行した。 病理組織検査で有棘層の水疱形成と免疫染色で棘細胞周囲への IgG の沈着を認めた。 さらに血液検査で抗デスモグレイン1抗体が陰性, 抗デスモグレイン3 (Dsg3) 抗体が陽性であることから粘膜優位型尋常性天疱瘡と診断した。
 粘膜病変は尋常性天疱瘡の初発症状として多く認められる。 皮膚症状がなく, 口腔病変のみの患者では診断が遅れる傾向にある。 本症例において, 比較的早期に診断し得た理由として, 一見正常と思われる頬粘膜を吸引することでニコルスキー現象を確認できたことが挙げられる。 本法は天疱瘡患者の初診を診察する機会がある耳鼻咽喉科医にとって早期の粘膜表皮間の脆弱性を発見する有用な手段になる可能性があると思われた。
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