耳鼻咽喉科展望
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臨床
耳下腺腫瘍の手術症例に対する臨床的検討
内水 浩貴井坂 奈央小泉 博美三瓶 紗弥香柳 清
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2014 年 57 巻 3 号 p. 138-145

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抄録

  2003年8月から2013年3月までの間に当科にて耳下腺良性腫瘍と診断し, 腫瘍摘出術を行った初回手術例63例の検討を行った。 63例中58例が良性腫瘍であり, 5例が悪性腫瘍であった。 多形腺腫が35例 (55.6%) と最多で, 次いでワルチン腫瘍が14例 (22.2例) であった。 また悪性腫瘍5例全例が耳下腺癌 (4例が低悪性度耳下腺癌) であり, 2例で術前に疼痛が認められていた。 多形腺腫およびワルチン腫瘍の平均年齢はそれぞれ46.6歳, 59.7歳であり, ワルチン腫瘍症例で有意に平均年齢が高かった。 腫瘍の局在では浅葉が50例, 深葉が13例であり, 深葉ではワルチン腫瘍の占める割合が浅葉に比べ高い傾向を認めた。 術後の顔面神経麻痺は16例で認め, 浅葉では50例中10例 (20.0%), 深葉では13例中6例 (46.2%) であり, 深葉で術後顔面神経麻痺を来しやすい傾向を認めた。 16例中2例で, 顔面神経を温存したにも関わらず軽度麻痺が残存した。
  良性腫瘍に関する傾向や顔面神経麻痺の発生率などは, これまでの報告と類似した結果であった。 低悪性度耳下腺癌の場合には術前に良性腫瘍と鑑別することが難しいこともあるが, 疼痛は悪性を示唆する兆候として重要であると考えた。

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