耳鼻咽喉科展望
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臨床
副鼻腔炎に続発した海綿静脈洞血栓症の1例
武富 弘敬多田 剛志海邊 昭子細川 悠穴澤 卯太郎蓮 琢也吉村 剛田中 康広
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2016 年 59 巻 5 号 p. 237-242

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抄録

 副鼻腔炎による眼窩内合併症の一つである海綿静脈洞血栓症は抗菌薬が普及した現在では非常に稀な疾患ではあるが, 早期に診断し治療を開始しなければ致死的になることもある。
 今回, 早期発見, 治療により軽快した慢性副鼻腔炎急性増悪に続発した海綿静脈洞血栓症の1例を経験した。 症例は27歳女性, 特記すべき既往歴はない。 約1週間前からの頭痛, 右眼球突出, 右視力低下を主訴に当院外来を受診した。 副鼻腔単純 CT より両側副鼻腔炎と診断し, 同日より精査加療目的に緊急入院となった。 MRI, 脳血管造影検査等より右海綿静脈洞血栓症が疑われ, 副鼻腔炎に続発したものと考えられた。 入院翌日に感染制御を目的として副鼻腔炎に対して内視鏡下鼻内手術を施行した。 脳神経外科医および眼科医と相談の上, ステロイド剤や抗凝固薬も併用し, その後徐々に症状と所見の改善を認めた。 海綿静脈洞血栓症は致死率が高く, 一命を取りとめても合併症が残存することもあるため早期の診断と治療が重要であり, 稀な疾患ではあるが副鼻腔炎の一合併症として常に念頭におく必要がある。

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