新生児, 乳児の喘鳴では咽頭の狭窄, 喉頭の狭窄のいずれかまたは両方の原因であることが多い。 咽頭狭窄では頭蓋顔面奇形などが合併していることも少なくないが, 経鼻エアウェイや NPPV などの方法で対応できることもある。 喉頭狭窄では, 声門下狭窄の程度を正確に把握し, 声帯麻痺の原因が神経性か, 瘢痕癒着による可動制限であるのかを正しく診断する必要がある。 その上でなるべく侵襲が少なく, 低年齢で行えるような手術を選択していく。
副鼻腔炎による眼窩内合併症の一つである海綿静脈洞血栓症は抗菌薬が普及した現在では非常に稀な疾患ではあるが, 早期に診断し治療を開始しなければ致死的になることもある。
今回, 早期発見, 治療により軽快した慢性副鼻腔炎急性増悪に続発した海綿静脈洞血栓症の1例を経験した。 症例は27歳女性, 特記すべき既往歴はない。 約1週間前からの頭痛, 右眼球突出, 右視力低下を主訴に当院外来を受診した。 副鼻腔単純 CT より両側副鼻腔炎と診断し, 同日より精査加療目的に緊急入院となった。 MRI, 脳血管造影検査等より右海綿静脈洞血栓症が疑われ, 副鼻腔炎に続発したものと考えられた。 入院翌日に感染制御を目的として副鼻腔炎に対して内視鏡下鼻内手術を施行した。 脳神経外科医および眼科医と相談の上, ステロイド剤や抗凝固薬も併用し, その後徐々に症状と所見の改善を認めた。 海綿静脈洞血栓症は致死率が高く, 一命を取りとめても合併症が残存することもあるため早期の診断と治療が重要であり, 稀な疾患ではあるが副鼻腔炎の一合併症として常に念頭におく必要がある。
腎細胞癌は異時性多発性転移を来たしやすく, 頭頸部領域への孤立性転移はまれである。
今回われわれは腎細胞癌で腎臓摘出を受け, 約25年経過し頸部転移した症例を経験した。 症例は70歳男性。 右側頸部腫瘤を自覚し当院当科を受診した。 針生検にて腎細胞癌淡明細胞癌の頸部転移と診断し, また画像検査にて S 状結腸癌の合併が判明した。 まずは S 状結腸癌による S 状結腸に強い狭窄と易出血性であるため, 当院外科にて S 状結腸, 回盲部切除が行われた。 その後, 当科での甲状腺全摘, 下咽頭・喉頭全摘出術, 頸部郭清術を検討したが患者は手術を希望しなかったため, 泌尿器科にてスニチニブの投与が開始された。 約17ヵ月内服し甲状腺腫瘍は著明に縮小したため, 甲状腺全摘, 右頸部郭清術 (D2b) を施行した。 術中の出血量は約 500cc であった。 術後は合併症なく経過良好で退院となった。 その後は外来で経過観察しているが, 頸部には再発を認めていない。
眼窩内膿瘍は眼窩内に独立した膿汁を認める状態となり, 視器障害を来す疾患である。 今回われわれは慢性副鼻腔炎急性増悪に起因する眼窩内膿瘍の1例を経験したので報告する。
症例は33歳男性。 近医耳鼻咽喉科にて数ヵ月前より慢性副鼻腔炎の診断のもと加療されていたが, 突然右眼瞼腫脹が生じ, 近医眼科で眼窩蜂窩織炎と診断され, 当院眼科へ紹介となった。 眼科的検査では右眼球運動障害, 右視力低下, 右眼圧上昇があり, CT で副鼻腔炎所見と眼窩内の膿瘍形成を認めたため, 同日に当科依頼され, 全身麻酔下に右内視鏡下鼻内副鼻腔手術, 鼻中隔矯正術を施行した。 術中所見にて右眼窩骨膜内より排膿を認め眼窩内膿瘍と診断した。 術後は抗菌薬の点滴静注にて視器症状は徐々に改善し, 術後12日目に経過良好にて退院となった。 日々の診療において慢性副鼻腔炎はよく遭遇する疾患であるが, 急性増悪により鼻性眼窩内合併症を生じる可能性がある。 なかでも眼窩内膿瘍は視器に不可逆的な障害を残したり, 海綿静脈洞血栓症, 髄膜炎, 硬膜下膿瘍, 脳膿瘍へ進展し, 死の転帰をとることさえあるため, 迅速かつ適切な治療が必要とされる。
ポリープ様声帯は声帯膜様部全長にびまん性の浮腫状変化を来す疾患であり, その病変の主座は, 声帯粘膜固有層浅層にある。 40歳以上の喫煙者に好発し, 嗄声や声の低音化が主症状である。 両側性で慢性の経過をとるが, 時に呼吸困難を来すことがある。
今回, 体重/BMI がそれぞれ142.5kg/49.6, 及び, 98.5kg/43 の高度肥満に合併したⅢ型 (米川分類) のポリープ様声帯2症例を経験した。 手術に際しての気道確保については, 麻酔科との術前協議にて1例目は意識下による経鼻挿管, 2例目は通常の経口挿管を行い確保した。 実際の手術においてはマイクロデブリッダーによる病変の切除を行い, 良好な結果を得た。