耳鼻咽喉科展望
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臨床
喉頭痙攣を契機に球脊髄性筋萎縮症の診断に至った1例
佐久間 信行由井 亮輔田中 大貴尾田 丈明児玉 浩希大戸 弘人高橋 昌寛石垣 高志長岡 真人小林 俊樹小島 博己
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2021 年 64 巻 2 号 p. 107-112

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抄録

 喉頭痙攣は, 一般的には気管内挿管, 内視鏡挿入操作や唾液, 血液, 食物, 嘔吐物の喉頭内への流入が刺激となって起こることが知られているが, 頻度は少ないものの, 神経筋疾患に起因するものも存在する。

 今回われわれは喉頭痙攣を契機に球脊髄性筋萎縮症の診断に至った1例を経験したため, 文献的考察を加えここに報告する。

 症例は49歳, 男性。 X-1 日より, 咽頭痛と呼吸苦が出現し症状が増悪したため, X 日に近医耳鼻咽喉科を受診した。 声帯の開大制限を指摘され, 同日, 当院へ救急搬送された。 喉頭内視鏡検査所見にて, 両側声帯の痙攣と開大制限, 発赤を認めた。 神経内科に診察を依頼したところ, 頭部 MRI 画像上では明らかな異常所見は認められなかったが, 舌萎縮, 女性化乳房, 両足裏萎縮の身体所見があり, 球脊髄性筋萎縮症 (spinal and bulbar muscular atrophy: SBMA) が疑われた。 後日, 遺伝子診断により球脊髄性筋萎縮症の確定診断に至った。

 球脊髄性筋萎縮症は顔面, 口腔咽頭を主として, 四肢を含めた全身の筋力低下, 筋肉萎縮を生じる遺伝性の緩徐進行型下位運動ニューロン疾患である。 初発症状としては, 舌および四肢近位部優位の筋萎縮および筋力低下, 構音障害や嚥下障害, 女性化乳房といった症状が一般的に多く知られており, 後に球麻痺の進行に伴い, 構音障害や嚥下障害, 喉頭痙攣等の症状の出現を認める。

 喉頭痙攣に遭遇した際, 神経筋疾患が原因である可能性を念頭におき, 精査を進めていく必要がある。

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