2021 年 64 巻 2 号 p. 85-91
陳旧性眼窩吹き抜け骨折は, 新鮮例に比べ眼球運動の改善に乏しく治療は困難であり報告例も少ない。 手術の要点は眼窩内容物の可動性を妨げている癒着部位の同定とその解除である。 近年シネモード MRI の眼窩吹き抜け骨折治療への応用が報告されてきており, 癒着箇所の同定に有用である。 今回われわれは顔面多発外傷後の陳旧性眼窩吹き抜け骨折手術においてシネモード MRI を用いて癒着箇所を同定し, 良好な治療効果が得られた症例を経験したため報告する。
症例は54歳, 男性。 前年に顔面多発骨折のため当科で観血的整復術を施行した。 複視の自覚がなかったため, 眼窩の再建は施行しなかった。 初回手術から半年後に複視を自覚したため, 金属プレート抜去と同時に陳旧性眼窩吹き抜け骨折整復術を施行した。 術前にシネモード MRI にて眼球運動障害の原因箇所が眼窩内側壁であったことが同定でき, 同部位の癒着を解除したことで眼球運動は術前に比べ改善した。
シネモード MRI は癒着部位の評価治療に非常に有効であった。 癒着部位が同定可能な場合は, 陳旧性眼窩吹き抜け骨折においても癒着を解除することで眼球運動が改善する可能性があるため, 積極的に手術を行うべきである。