1997 年 40 巻 Supplement1 号 p. 19-27
20~69歳の409耳を対象にDPOAEの測定を行い, 純音聴力閾値と共に年齢との関係を調べた。その結果, 純音聴力閾値と高い刺激周波数によるDPOAEでは年齢に対してほぼ直線的に低下していたが, 低い刺激周波数における変化は他と異なっていた。そこで, これらの差が聴覚中枢の劣化が影響しているものと考え, その程度を推測するために, 音刺激を与えてから反応するまでの時間を測定し, 年齢との関係を調べた。その結果, 低い周波数における純音聴力閾値は若年層では末梢での機能低下がほとんどみられないにもかかわらず中枢の関与が大きく影響しているために上昇しているのではないかと推察された。また, 低い刺激周波数によるDPOAEの結果から聴覚末梢の劣化は40歳前後を境に始まるのではないかと考えられた。