耳鼻咽喉科展望
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小児滲出性中耳炎の治療成績
歌橋 弘哉三谷 幸恵辻 富彦濱田 幸雄青木 和博森山 寛
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1999 年 42 巻 5 号 p. 493-500

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抄録

小児滲出性中耳炎の病態は, 鼻咽腔の炎症と耳管を介した中耳含気蜂巣の換気・排泄障害に起因するといわれている。小児滲出性中耳炎症例では, 中耳含気腔内の慢性的な炎症刺激により乳突蜂巣の発育が抑制される。このことから当科における小児滲出性中耳炎の治療方針は, 初診時のシュラー法X線検査における乳突蜂巣の発育程度を基準に決定している。蜂巣発育の良好な症例には保存的な治療, 発育が抑制された症例では積極的に鼓膜換気チューブ留置術, アデノイド切除術を行っている。
1981年4月より1998年12月までに, 当科滲出性中耳炎外来を受診した1歳から15歳までの727例1,338耳に対してアデノイド肥大, 副鼻腔炎の合併の有無, チューブ留置期間, チューブ抜去後経過, アデノイド切除術の有無について検討を行った。
初診時の乳突蜂巣の発育が良好で保存的治療を選択した {保存群} は80%が治癒した。蜂巣発育が良好にも関わらず保存治療で改善がみられず手術を選択した {保存-手術群} は, 84例149耳にみられた。保存治療で改善がみられた {保存群} と {保存一手術群} において, 症例の副鼻腔炎・アデノイド肥大の重症度に有意差を認めた。また, チューブ留置期間においては, 長期間留置するにしたがい再チューブ留置を必要とした再発群は減少し, 18ヵ月以上と18ヵ月未満留置した群において有意差があり, 18ヵ月以上2年程度の留置が有効であると考えられた。さらに, アデノイド切除術の施行の有無において, アデノイド切除を行った群において経過良好であった群が有意に多くみられ, アデノイド切除も滲出性中耳炎の治療に有用であると示唆された。

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