抄録
後天性外耳道狭窄症の原因として、外傷、炎症、腫瘍、骨増殖性によるものが挙げられる。今回、耳掻きによる慢性外耳道炎のため両側外耳道狭窄症を来たした一例を経験した。両側に炎症性の外耳道狭窄を認める症例は文献的にまれである。本症例では、耳漏・難聴を反復しており、また、外耳道真珠腫予防の点も考慮し、手術適応であると考えた。手術による感音難聴の可能性は低いと考え、また、患者の強い希望もあり、両側同時に手術を施行した。両側とも再狭窄を認めず、術後経過良好である。外耳道狭窄症は、無症状の場合、見過ごされやすいが、重大な合併症を来たす症例もあり、定期的な経過観察を行うとともに、適応があれば早期に手術治療を行うべきと考える。本症例は両側同時手術を行ったが、患者満足度は高く、今後も症例を選んで、十分なインフォームド・コンセントを行い、希望があった場合、両側同時手術を行うことも選択肢の一つになると考える。