抄録
真珠腫手術の際に、硬膜やS状静脈洞に癒着がある症例に対してどのような術式を選択するかは難しい。症例は16歳女性で、真珠腫上皮が後頭蓋窩硬膜およびS状静脈洞と広範囲に癒着し、摘出が困難と予測された症例である。
症例が若年者であること、乳突腔が広いことなどから、まずは外耳道後壁を保存して真珠腫の全摘出を試みたところ、真珠腫の残存なく摘出できた。しかし、危険部位での真珠腫残存の可能性と若年者であることを考慮して段階的手術とした。段階的手術二回目の手術所見では真珠腫の遺残は認められなかったが、乳突腔内は肉芽組織で充満し、再形成性真珠腫が認められたため、乳突腔の含気化は期待できないと考え、乳突腔充填を行った。
この症例に対する設問の聴衆からの回答結果と、実際に施行した手術法とを比較検討した。