抄録
前庭窓欠損は稀な中耳奇形で、顔面神経走行異常を伴うことが多く手術にはリスクを伴う。最近当科で聴力改善手術を行った2症例(3耳)を報告する。
1例目は38歳女性。耳小骨奇形の診断で右アブミ骨手術を行った。アブミ骨脚および前庭窓は欠損しており、顔面神経水平部は本来の前庭窓より低位を走行していた。前庭窓に相当する部位を開窓し、テフロンワイヤーピストンを用いて伝音再建を行った。4か月後に患者本人の希望により左アブミ骨手術を行った。前庭窓は欠損し、顔面神経水平部は2本に分岐していた。右耳と同様の方法で伝音再建を行った。
2例目は4歳男児。左耳小骨奇形の診断で左アブミ骨手術を行った。アブミ骨脚および前庭窓は欠損していたが、顔面神経水平部の走行は正常であった。前庭窓に相当する部位を開窓し、テフロンワイヤーピストンを用いて伝音再建を行った。
今回の2例3耳はいずれも良好な聴力改善が得られた。前庭窓欠損は、合併する顔面神経走行異常や開窓部の骨の厚さのため手術に困難を伴い伝音再建が躊躇されることも多いが、今回の症例のように大幅な聴力改善を得ることができる疾患でもある。