抄録
経中頭蓋窩法は1961年にWilliam Houseが聴神経腫瘍に対して、聴力保存を目的に考案したアプローチで、錐体骨上面から蝸牛や半規管を破壊せず内耳道を開放して腫瘍を摘出する方法である。本アプローチは聴神経腫瘍以外に錐体部の真珠腫やコレステリン嚢胞、顔面神経膝部から発生する神経鞘腫や血管腫、上半規管裂隙症候群の裂隙閉鎖、Bell麻痺やRamsay Hunt症候群、外傷性顔面神経麻痺に対する減荷術などに適応される。側頭骨手術において聴力や前庭、顔面神経の機能保存手術は耳科医にとって究極の課題であると同時に、近年MRIや高分解能CTの普及により小聴神経腫瘍や錐体部真珠腫、上半規管裂隙症候群が容易に発見されるようになり、聴力や前庭機能を保存できる本術式の適応は拡大する傾向にある。中頭蓋窩法の最大のメリットを活かすと同時に聴覚や顔面神経の術中神経モニタリング、ナビゲーションなどの手術支援機器を用いて究極の課題である聴力や前庭、顔面神経の機能保存をめざした手術が望まれる。