2019 年 29 巻 2 号 p. 113-118
鎖耳(外耳道閉鎖症)に伴う高度な伝音難聴に対する聴覚補償として,人工中耳(VSB)が期待されている.しかし,鎖耳は顔面神経の前外側への走行異常を伴うことが多いためにVSBの設置が困難とされ,その手術アプローチには統一した見解がないのが現状である.アブミ骨の可動制限をともなう,あるいは顔面神経の走行異常でアブミ骨や前庭窓の確認が困難な場合を想定する必要がある.そこで,CT画像を踏まえた術前の評価,ならびに顔面神経乳突部と後頭蓋窩の間を通って後鼓室や正円窓窩に達するretrofacial approachでの挿入方法を紹介した.その際,アブミ骨筋の一部を切断することで,後頭蓋窩と顔面神経とのスぺースが増し,アプローチしやすくなると考えられた.