抄録
【はじめに】
当診療所が所在する長崎県松浦市福島町の高齢化率は31.3%で、長崎県の高齢化率23.4%と比べても虚弱高齢者が多い現状である。そのような状況を受けて平成17年6月より通所リハビリテーション(以下,通所リハ)を開設しパワーリハビリテーション(以下,パワリハ)を実施してきた。その効果について検討したので報告する。
【対象】
当診療所の通所リハを利用している46名中、パワリハ導入時の平成17年6月から平成18年6月迄の1年間にパワリハを継続して行うことができた28名(男性14名、女性14名)、平均年齢82.6±8.2歳を対象とした。対象者には、1週間に1ないし2回、1回1時間程度のパワリハを実施してきた。
【方法】
パワリハの効果判定として用いた測定項目は、1)Barthel Index(以下,BI),2)Body Mass Index(以下,BMI),3)握力(以下,GS),4)座位体前屈(以下,STF),5)Functional reach Test(以下,FRT),6)開眼片脚立位(以下,FEO),7)Timed Up & Go test(以下,TUG) ,8)6分間歩行(以下,6MD)であり、測定時期はパワリハ導入時(以下,初回)、初回より3ヶ月後、6ヶ月後、9ヶ月後、12ヶ月後の計5回測定した。統計学的解析は、対象者の特性を知るため年齢と身長・体重及び測定項目との関連を回帰分析にてみた。また、各測定項目において初回を含め計5回の測定結果間における関連を分散分析(ANOVA)にて、初回と他の時期との比較には多重比較(Dunnett)を用いた。
【結果】
年齢と身長・体重及びGSとの間には負の相関を認め、加齢に伴い身長は低くなり(r=‐0.57)、体重は減少していた(r=‐0.61)。またGSは低下していた(r=‐0.55)。パワリハ実施期間と各測定項目との関連では、STFとFRTが初回データと比べて3ヶ月以後より改善を認めていた。また、TUGと6MDでは、12ヶ月後でようやく有意な改善結果が得られていた。
【考察】
今回の調査の結果、初回から3ケ月で有意な効果が現れていたのはSTFとFRTのみだった。STFに関しては筋の伸張性が向上したことに加え毎回のパワリハ前後に行うストレッチ運動の効果もあったのではないかと考えた。FRTの向上には立位バランスに寄与する筋骨格系機能の向上と、定期的に行う測定に対する予測的姿勢能力が学習されたのではないかと推察した。一方TUGや6MDの効果には1年を要していた。これは、今回の対象者が平均年齢82.6歳と高齢だったため、機能向上や動作の学習に時間を要したのではないかと考えた。しかし、対象が高齢にもかかわらず1年を通じて通所できていることからパワリハの効果があったのではないかと考え、また高齢者に対しては長期間の維持期リハの必要性が示唆された。