科学技術の側面を重視しながら,食糧技術の今後の約30年の将来ビジョンについて考察する.歴史的に考えると,世界人口の推移に呼応して食糧生産に関係する注目すべき技術が数多く出現している.食糧技術の発展史で注目すべき要素は,品種改良,化学肥料,農薬,灌〔かん〕漑〔がい〕技術,農業機械および物流技術である.一方,歴史的な蓄積技術だけでは世界的に複雑化する食糧問題を解決することが困難になっており,革新的な科学技術への役割に期待が高まっている.したがって,食糧技術の将来ビジョンについては,革新技術の観点で食糧・食品の安全性向上,地球環境への適応および自給率向上の3項目に関して論じた.食糧技術を狭い局所最適論で展開すると,地球生命のサステナビリティが維持できないので,持続可能な地球視点(エネルギー・資源・環境との相互作用)を特に重視した.