2011 年 80 巻 5 号 p. 415-419
大型ハドロン衝突型加速器(Large Hadron Collider : LHC)が,1994年の建設決定以来,14年の歳月を経て2008年に完成した.円周27kmに及ぶ粒子加速器は,7000台を超えるさまざまな超伝導磁石,加速空洞システムによって構成され,超伝導技術が本質的な役割を担っている.2010年春から,新たなエネルギーフロンティアにおける素粒子物理実験が始まった.陽子や鉛核イオンの正面衝突によって,宇宙開〔かい〕闢〔びゃく〕直後の素粒子反応状態を再現し,質量起源を説明する「ヒッグス粒子」や,宇宙「暗黒物質」の探索など,初期宇宙への新たな理解,物理法則の発見への期待が高まる.実験素粒子物理学の最前線を担う超伝導磁石技術を紹介する.