2020 年 89 巻 7 号 p. 384-389
再生医療を実現する方法の1つとして,細胞シート工学と呼ばれる生体を模倣した組織を作り出す技術が注目されている.この技術は高分子材料を利用して培養基材に特殊な機能を付与する工学的なアプローチから始まっている.温度によって物性が変化する温度応答性培養基材を使えば,通常用いられるタンパク質分解酵素を使用せず,温度を変化させて細胞をシート状組織として回収できる.その結果,これまでの組織工学において研究されてきた人工材料(スキャホールド)を必要としない画期的な技術として再生医療分野において発展し,この技術をベースとする再生医療は現在いくつかの疾患に対してヒト臨床研究が行われている.本稿ではその基礎となる温度応答性基材の特徴と代表的な再生医療への展開について,また現状の課題に対する新たな取り組みも含めて解説する.