2021 年 90 巻 4 号 p. 230-233
グラフェンは伝導性の高い金属として知られるが,ナノメートル幅に切り出されたグラフェンナノリボン(GNR)は,量子閉じ込め効果によりエネルギーギャップが開き,一種のトポロジカル絶縁体として振る舞うことがわかってきた.一般に,トポロジーの異なる2つのリボン同士を接合すると,接合部分に0次元トポロジカル界面状態が生じる.最近筆者らは,このような界面状態がGNRの枝分かれ部分にも現れることを示し,さらに,分岐をつなげて周期ネットワークにすることで,トポロジカル界面状態を「原子」とするナノスケール2次元結晶を作ることを提案した.このような系では,その特異なバンド構造から,通常の物質と大きく異なったエキゾチックな物理現象が実現されることが期待される.本稿では,物性物理学に現れるトポロジーの概念に触れながら,GNRに備わるトポロジカルな性質を紹介する.