2021 年 90 巻 6 号 p. 355-359
電磁波周波数0.1~10THz(波長30µm~3mm)に当たるテラヘルツ帯はイメージング,分光分析や超高速無線通信などさまざまな応用が期待されている.一方,この周波数帯は社会実装に向けたさまざまなキーコンポーネントが未成熟で,さらなる技術進展が必要である.中赤外量子カスケードレーザー(QCL)内の差周波発生を利用したテラヘルツ光源は現在,電流注入のみで室温動作する唯一の単一素子の半導体レーザー光源である.これまでに0.6~6THzの範囲で動作が実現されており,超広帯域コム動作や波長可変光源が実証されている.最近では,イメージングへの応用の基礎実験も始まっている.本稿では,これら差周波発生による室温QCL光源の高効率化・低周波数化を目指す取り組みやさまざまな応用へ向けた研究の進展を紹介する.