2022 年 91 巻 1 号 p. 15-21
固体電極に接する電解液に形成される電気2重層は,電子移動や結合の組み替えを伴う電気化学反応だけでなく,電力を蓄えたり,誘起されたキャリヤを輸送する「場」として,物質の機能を引き出すために重要な役割を果たしている.その一方で,電解液を構成するイオンや溶媒が常に動き回っており,その分子スケールの描像は古典的な理解を超えられていない.本稿では,筆者らが開発してきた電気化学界面の顕微解析手法によりどのような情報が得られるかを述べたあと,分子動力学計算を併用しながら電気2重層中のイオンの振る舞いを詳細に解析してきた例を2つ紹介しつつ,どこまで分子的な描像に迫ることができるのかについて述べてみたい.