2022 年 91 巻 5 号 p. 276-279
格子熱伝導度は,材料の断熱性や放熱性を決定付ける重要な物性である.近年,材料の断熱性を向上させる取り組みとして,結晶粒界で生じる熱抵抗を積極的に活用したナノ多結晶体が熱電変換などの分野で盛んに作製されている.しかしながら,その熱伝導度の低下機構は十分に明らかにされていない.具体的には,粒界構造と熱伝導度の相関,ナノ多結晶化による粒内フォノン散乱,結晶粒の形状が熱伝導に与える影響など,多くの不明点がある.本稿では,原子レベルの計算科学手法や構造記述子などの情報科学的手法を用いて,これらの不明点を微視的観点から解明した研究例を2つ紹介する.