2022 年 91 巻 5 号 p. 280-284
本稿ではカルコパイライト型リン化物半導体を太陽電池に応用する研究の中で,状態図(相図)を用いたバルク結晶成長,および化学ポテンシャル図を用いた薄膜成長や界面安定性に関する内容を紹介する.カルコパイライト化合物のような多元系材料を作製するうえでは自由度が高くなるため安定相を俯瞰(ふかん)できる状態図は有用なツールであることはいうまでもない.一方,化学ポテンシャル図は,系の成分の化学ポテンシャルを軸にとった状態図である.通常の状態図と異なり,気相をあらわに取り扱える点で気相成長との整合性がよい.いずれも熱力学(平衡論)に基づいた情報であるが,これをプロセスに生かす方法について述べる.また,規則不規則転移を利用したバンドギャップ制御についても紹介する.