2022 年 91 巻 6 号 p. 327-333
薄膜太陽電池に用いられる多元化合物は,CuInSe2(CISe)に代表されるI-III-VI2族化合物からCu2ZnSnS4(CZTS)のI2-II-IV-VI4族,Cu2SnS3(CTS)のI2-IV-VI3族化合物へ広がってきた.それらの結晶構造は,CISのカルコパイライト型(空間群I42d (122)),CZTSのケステライト型(空間群I4 (79)),CTSの単斜晶系(空間群Cc (9))と変化する.本稿では,それらの化合物の結晶構造と電子構造(禁制帯幅や価電子帯上端と伝導帯下端の準位)の特徴について述べる.そして,ZnSeとCuGaSe2,CuInSe2とCu2ZnSnSe4,Cu2ZnSnS4とCu2SnS3の違いについて,理論計算の結果と分子軌道エネルギー準位図を用いて議論する.