トポロジカル物質で生じる巨大な磁気応答現象や磁気熱電変換現象の応用展開が期待されている.トポロジカル磁性体Fe3Sn2結晶が特筆すべき性質を有することから,筆者らは,より汎用(はんよう)的なアモルファス状態のFe0.6Sn0.4合金薄膜を用いるホール素子の応用展開を目論(もくろ)んで研究を進めている.この素子は,安価かつ環境調和性に優れる元素で構成されるだけでなく,素子単体での高い温度安定性や薄膜の機械的柔軟性を生かした新しいアプリケーションを提供できる可能性もある.さらに,ホール効果に加えて磁性体特有の磁気抵抗効果の同時計測も可能なため,平面型の単一素子で3次元磁場ベクトルを検出することに適用できる.本稿では,各種の薄膜磁気センサの動作原理を概説した後,Fe-Snアモルファス薄膜の合成方法と基本的性質,更にはその薄膜を用いた十字型ホール素子と平面型3次元磁場センサの原理と動作特性について紹介する.