応用物理
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Print ISSN : 0369-8009
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酸化ニッケルを用いた可視光透過型デバイスの提案
杉山 睦
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2023 年 92 巻 1 号 p. 25-29

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抄録

ワイドバンドギャップ酸化物半導体である酸化ニッケル(NiO)は,p型伝導性を示し,ドーピングによって絶縁体から金属的振る舞いまで変化させることが可能で,価電子帯上端と伝導帯下端のエネルギー位置が高いために正孔輸送層や電子ブロック層に応用できるなど,他の酸化物半導体では実現できない特性を有する機能性材料である.この特徴を生かし,n型ZnOなどとで構成されるNiO/ZnO可視光透過型太陽電池は,紫外線のみを吸収し発電する太陽電池・紫外線センサとして応用が期待される.また,透明な太陽電池で生み出したエネルギーを中心として,透明なセンサ・トランジスタなどと組み合わせることで,IoT向けエネルギーハーベストデバイスの実現も期待できる.本稿では,工業化が容易なRFマグネトロンスパッタ法にて堆積したNiOの諸特性,NiOを用いた各種「可視光透過型デバイス」,更には,放射線耐性などIoTデバイスとしての強固さについて,筆者らの研究成果を紹介する.

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© 2023 公益社団法人応用物理学会
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