2023 年 92 巻 5 号 p. 287-291
微量の血液や尿,唾液などの体液から疾患検査を簡易かつ迅速に行う計測技術は,コロナパンデミックによりますます重要性を増している.トランジスタのチャネルにグラフェンを利用したISFET型バイオセンサは,高い電子移動度と大きな比表面積から,高感度バイオセンシングが期待できる.しかし,電荷を検出するFETセンサでは測定範囲を制限するデバイ遮蔽の問題があり,生理的な塩濃度の溶液中では生体高分子の検出が困難であった.そこで本稿では,基板から自立させたグラフェン表面を分子レセプターで機能化することによって分子認識能を与え,選択性を持った超高感度バイオセンサ技術を紹介する.吸着分子と自立グラフェン膜の相互作用を機械量に置き換えて信号出力することによりサイズに制約のないバイオセンシングが可能となる.