2023 年 92 巻 5 号 p. 283-286
生体分子により構成された分子機械は,生命現象の根源であるだけでなく,ポストシリコン時代のナノマシンや分子演算デバイスとして応用が期待されている.我々はこれまでに,生体分子とコンピュータをリアルタイムにつなぐインタフェースとして,ナノスケールの分解能で電場現象を変幻自在に呈示する「バーチャル電極ディスプレイ」を開発してきた.窒化シリコン(SiN)薄膜の裏面から照射した電子線により,薄膜表面にナノスケールの空間電場を呈示し,水溶液中の生体分子を電気的・化学的・機械的に制御することができる.この技術を用いて,リアル分子と情報空間をつなげる拡張現実技術を目指し,コンピュータ上の情報空間から生細胞や人工細胞膜の形や膜タンパク質を制御することに挑戦している.