日本心理学会大会発表論文集
Online ISSN : 2433-7609
日本心理学会第85回大会
セッションID: PD-020
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4.臨床・障害
聞き取り困難を抱える成人例に対する聴覚情報処理検査の有効性に関する検討
*小渕 千絵
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抄録

聴力は正常であるが聞き取り困難を抱える例がみられる。その背景には,聴覚情報処理障害(APD)あるいは聞き取り困難(LiD)があると考えられている。これらの聞き取り困難特性を明確にする上では,評価によりその重症度を把握する必要があるが,成人例の場合,個人差が大きく困難度の推定が困難である。本研究では,聴覚情報処理検査(APT, 学苑社)を用い,聴力正常で聞き取り困難を抱える成人例33名(平均31.8±9.2歳)に実施し,その困難度の抽出について検討した。対象者には主観的な聞き取り困難の質問紙を実施したところ,平均69.1点(SD 17.9)と全例109点のカットオフ値を下回った。なお,強大音や継続的な音楽聴取経験のある者は除外した。全例にAPTを行い,このうち重要とされる4課題を抽出し8領域について,健聴者平均と標準偏差をもとに1SD以下を1点,2SD以下を2点と重みづけして検討した。この結果,重みづけ得点は平均5.5点(SD 2.7)であり,1名を除く全例で低下のある検査項目がみられた。聞き取り困難特性については,複数の検査結果から複合的に困難度を予測して評価する必要性が考えられた。

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