抄録
本発表は、ブラジル日本移民史の重要な資料として、第二次世界大戦前に発行された『日本新聞』に注目し、創刊年である1932年を中心に『日本新聞』におけるアマゾン移民関連報道を検討することで、その資料としての特徴を検証するものである。また、同時代の他紙報道との比較を行い、当時のブラジル日本移民言論空間においてアマゾン移民がどのような位置づけにあったのかを確認する。
拙稿[長尾 2023]では、沖縄県系移民の協力のもと、翁長助成によって創刊され、新聞の論調は翁長に属するという『日本新聞』への従来の理解に対して、創刊初期における翁長の影響は限定的であり、1932年1月の創刊から同年11月まで、非沖縄県系の中西周甫が編集の中心であったことを明らかにしている。本発表では、中西が影響力を持っていた時代の『日本新聞』と翁長が影響力を持った後の『日本新聞』の論調の違いを確認するため、当時進行中であったアマゾンへの日本移民導入に関する記事に注目する。なお、翁長はペルーからアマゾン地域を経てブラジルへと渡った経歴を持ち、『日本新聞』へ関わる以前に『日伯新聞』にてアマゾン移民への反対論を唱えている。以下では、アマゾン移民を巡るブラジル側、日本側の背景を確認した上で、当時の邦字新聞各紙における論調をまとめ、さらに中西時代と翁長時代の『日本新聞』における論調を比較検討していく。
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