抄録
1. はじめに
ニーニョ・コンパドリート(以下、NC)はペルークスコ市の民衆聖人(カトリック)である。ミイラ化した子供の骨格に、かつら、マントなどを着せ、カトリック聖人の形状に似せて作られている。1950年ごろからその信仰についての証言があり、70年代に信者数が急拡大、それに危機感をおぼえたカトリック教会の弾圧がはじまる。そして信者らの地下活動が開始され、それは、弾圧した大司教らのミステリアスな死まで続いた。「復讐する聖人」という民衆の解釈はその地下活動の中で形成されたが、結局両者は相手に対して無関心を決め込み休戦。その間にNCは「復讐」というイメージをトーンダウンし、信者を再度獲得し安定期を迎えた。そしてNCはクスコの他のシンクレティックな聖人同様、そのまま民衆聖人の地位を確立すると思われた。しかし2021年7月23日礼拝堂から出火。NCは焼け出され、NCはこれまでにない大きな変化を余儀なくされた。
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