抄録
界面活性剤の分子集合体をテンプレートとして合成されたメソポーラスマテリアルの細孔壁はアモルファス構造であるため、ヘテロ原子を構造中に取り込むための制約がないので、ミクロにはアモルファスであるが、骨格中に導入された遷移金属が原子状に分散され、細孔径の制御されたメタロメソポーラスマテリアルが得られることは大変興味深い。本研究では、触媒活性のあるTiおよびVを導入したシリカメソ構造体を合成し、結晶化の速度論的解析を行なった。本稿ではTiの結果を示す。修正Kissingerの式より求めた結晶化の活性化エネルギーは、界面活性剤添加試料では489kJ/mol、無添加試料では278kJ/molとなり、メソ多孔体の方が高い値を示した。細孔の存在は活性化エネルギーを高くすることがわかった。Tiを含有していない試料では、界面活性剤添加試料では332kJ/mol、無添加試料では242kJ/molとなり、Ti含有試料の方が高い活性化エネルギーを要することがわかった。メソ多孔体は細孔構造を維持している間はアモルファスであるが、細孔の崩壊とともに結晶化が急速に進行すると考えられる。