抄録
強誘電体メモリ(FeRAM)用材料として考えられているPbZrxTi1-xO3は、熱処理を行うことにより強誘電特性が変化することが知られている。これらの要因として熱処理による結晶構造の変化、鉛の欠陥、酸素ノンストイキオメトリーなどが考えられる。そこで本研究では熱処理によるPbZrxTi1-xO3(x=0.40, 0.45, 0.53)の物性、結晶構造と強誘電特性の関係をバルク体を用いて検討し、強誘電特性を支配する因子について考察した。試料(x=0.40, 0.45)は共に、高酸素分圧熱処理をすることにより残留分極(Pr)は向上し、真空熱処理を行うことによりPrは減少した。高酸素分圧熱処理を行った試料(x=0.40)について結晶構造より求めた自発分極値も増加する傾向が見られたが、構造モデルが若干異なる試料(x=0.45)においてはやや異なる傾向がみられた。そこで、組成により熱処理の依存性に違いがみられるかについて、結晶構造解析を行い強誘電体特性との関係を含めて検討した。また、x=0.40の抗電界(Ec)およびキュリー温度(Tc)は、高酸素分圧熱処理では高くなり、真空熱処理では低くなった。これらは酸素欠損と関連していると考えられる。