日本セラミックス協会 年会・秋季シンポジウム 講演予稿集
第17回秋季シンポジウム
セッションID: 3A08
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表面傾斜構造を有する高強度光触媒繊維とその用途展開
*石川 敏弘
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抄録
 セラミックスの表面には、必要に応じて各種機能層が形成されている場合が多いのですが、これは材料の内部と表面で要求される機能が異なっていたり、材料表面に内部を保護する機能が要求されたりするからです。これまでは、コーティングと言う基材表面に塗る方法が一般的でしたが、この場合、塗る工程と後処理工程が必要な上、使用環境によっては表面層の剥がれも生じると言う問題点もありました。これに対して、予め前駆体中に機能性無機材料に変換され得る低分子量物を適量混合しておけば、形状を付与した後の熱処理過程に低分子量物が表面に向かって相分離する現象(ブリードアウト)が進行し、バルクセラミックスの生成と同時に、ナノスケールで組成が表面に向かって傾斜した表面機能層が効果的に形成されます。このブリードアウトは、通常プラスチックスでは好ましくない劣化現象の一つです。我々は、この現象を上手く利用した機能性セラミックスの合成プロセスを開発致しました。この方法は、基本的に前駆物質の段階で、目的の機能性セラミックスに変換され得る低分子量物と高分子材料が含有されている系には広く活用でき、表面層としてある特定の機能を付与したセラミックス材料を比較的安く合成することも可能にします。 この方法を具現化したものとして、光照射により環境汚染物質を酸化分解する能力を発揮する機能層を表面に形成させた高強度チタニア繊維(正確には表層がチタニアで、中心はシリカからなる繊維)を開発致しました。この繊維は、直径が約5ミクロン程度で、繊維1本1本の表面がチタニア焼結層からなり、内部に向かって傾斜構造を有していることから高速流水中でも表面層の剥離が起こりません。我々は、既にこのチタニア繊維を内蔵した浄水装置を開発して多くの分野でのフィールド実験を実施し、温浴施設やプール水の浄化等、積極的な市場展開を図っています。
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©  日本セラミックス協会 2004
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