抄録
本研究の対象物質であるカルシウムシリケートは、セメント、耐火物として魅力的な材料である。これらの材料では、原子間の結合状態が特性、物性を決める1つの重要な鍵になると考えられる。原子間の結合状態を調べる際に、その対象物質に何らかの摂動を与え、それに対する物理量の変化を観察することは大変有用である。ラマン散乱法は、原子間の振動状態を直接的に観察できる方法である。温度及び圧力を変化させた際の振動スペクトルの測定は、物質の格子振動モデル、熱力学的性質、相平衡を理解すために大変重要である。本研究では、セラミックスの分野で一般的に用いられてきた通常の粉末X 線回折法と相補的に、高温でのラマンスペクトルの変化を測定することにより、温度に対する振動の周波数変化を観測した。通常の高温でのラマン散乱測定では、緑や青の可視レーザーを用いているために、高温での熱輻射の影響が大きく、微弱なラマン線を検出することが非常に困難である。そこで本研究では、熱輻射の影響を軽減するために紫外レーザー(363.8 nm)励起による高温ラマン装置を用いて測定を行った。