抄録
電力の送配電網に用いられるガイシは,磁器に張力が働いた状態で数十年使用されるため,一定の品質を満たした磁器が要求される.磁器の品質を一定に保つためには,スラリー特性を安定させる必要があるが,季節による特性変動が発生するメカニズムについては十分な研究がなされていない.そこで,本研究では,スラリー特性の季節変動が発生するメカニズムについて検討を行った.その結果、原料の粉砕により結晶格子が破壊され,原料表面に水酸基を生成する。原料から溶出する鉄イオンはアルカリ性で水酸化鉄に変化しやすく,原料表面近傍の鉄イオン濃度が減少する.不足した鉄イオンを補うため,原料からさらに鉄イオンが溶出すると推察される.その結果,鉄イオンが溶出した電荷分だけ原料のζ電位の絶対値が大きくなり,スラリーが分散傾向に移行すると推察される.従って,原料からの鉄イオンの溶出と表面の水酸基がスラリーの分散に影響を及ぼしていると推察される.