抄録
岩塩型構造を有するMgO単結晶(001面)に対してフェムト秒レーザーを集光照射すると、{110}<110>系のすべりにより高密度転位領域が<110>方向に沿って形成され、クロス状のパターンが永久誘起される。一方、ガラス内部のフェムト秒レーザー誘起構造変化において、レーザー照射後の非常に短時間の応力緩和によって応力波が発生することが見出されており、単結晶内部の結晶面のすべりも応力波によって誘起されていると予想される。本研究では、レーザー照射により発生した応力波と転位形成との関連性について調べるために、ポンプ-プローブ法に基づいた時間分解透過イメージングによって、レーザー照射領域周辺の変形過程を観測した。応力波の形状は丸みを帯びた四角形であり、MgO単結晶の異方性によって<110>方向の音速が速いことに起因している。この形状から、高密度転位の形成領域での剪断応力が集中していると予想され、それによって高密度転位が誘起されると推測される。