抄録
高濃度アルカリ溶液中での低温溶液化学反応プロセスを用いることでワイドギャップ半導体である酸化チタン(TiO2)ナノチューブ(TNT)が合成できる。本研究では、TNTを光学的および化学的に機能化することを目的として、サマリウム(Sm)固溶TNTの合成、構造および機能評価を行った。XPS解析より、Smの結合エネルギーのケミカルシフトが確認された。蛍光スペクトル解析の結果、Sm-TNTはSm3+イオンに典型的な強い発光スペクトルを示した。一方、励起スペクトルはTiO2のバンド間遷移に基づくピークを示すことから、本材料ではTiO2からのエネルギー移動により固溶Smイオンが間接励起されていることが明らかとなった。また、Sm-TNTを用いたメチレンブルー除去能を評価したところ、Sm固溶により分子吸着能が大きく改善されている一方、光触媒特性は低下した。