抄録
シリカ上に担持したmonovanadateに水分を作用させると、monovanadateは速やかに重合し、無機高分子V2O5⋅nH2Oを生成する。こうして生成したV2O5⋅nH2O担持シリカを加熱脱水処理すると、V2O5⋅nH2Oはmonovandateに再分解、あるいは、無水V2O5に結晶化するが、どちらの過程が優先されるかは実験条件に依存する。加熱脱水までの放置時間もこのことに影響を与える要素の一つで、放置時間が長くなるとmonovanadateへの再分解が抑制され、V2O5への結晶化が促進されることが分かっている。V2O5への結晶化は、V2O5⋅nH2Oを構成する各リボンが互いに「接着」することによって起こると考えられているので、放置の間にはリボンの積層化が進むと考えられるが、まだ確かめられていない。
今回、0.5 atom/nm2の表面密度でmonovanadateを担持した多孔質シリカ(平均細孔径2.5 nm)に水分を作用させて合成したV2O5⋅nH2O担持シリカの放置中のラマンスペクトルを21時間(1260分)にわたりその場測定した。観測されたスペクトルの時間変化を詳細に解析した結果、シリカ上のV2O5⋅nH2Oの構造が放置中に孤立単層リボン構造から多層リボン構造へゆっくり変化することが分かった。今回の実験結果は、今まで考えられてきたV2O5結晶化のモデルに強い裏付けを与えるものである。