抄録
本研究では代表的なリラクサー型強誘電体のひとつであるPb(Mg1/3Nb2/3)O3(PMN)の作製と、リラクサー現象の起源とされる極性ナノ領域の解析を目的とした。PMNエピタキシャル薄膜の作製には比較的シンプルな化学液相法のひとつであるMOD(Metal Organic Decomposition)法を選択した。単結晶を得るために条件探索を行い、比較的状態の良いPMN単相の試料を得ることが出来た。透過型電子顕微鏡(TEM)用の試料作製は薄膜試料を機械研磨の後、Arイオンミリングにより薄片化した。得られたTEM試料の高分解能像よりPb原子のシフトが観察された。このようなシフトを幾何学的相解析により歪みとして解析したところ、数nm程の[111]方向に歪んだ領域が存在し、これが極性ナノ領域(PNR)とであり、リラクサー現象に寄与していると推測される。