抄録
[背景と目的]レーザやシンチレータといった光学材料は高い透明度が要求され“Cz”法で育成された大きな単結晶が商品化されている。商品化以前の、新規単結晶材料探索の研究段階では“マイクロ引き下げ法”により小さめの結晶を高速育成しスクリーニングを行っている。一方の透明セラミックスだが、作製方法としてHIP、ホットプレス、真空焼結、スパークプラズマ焼結という方法があり、上記単結晶育成方法と同様の関係にあるのが、“前駆体合成を経由した後に真空焼結”する方法と“スパークプラズマ焼結(SPS)”である。今回、立方晶系の構造で光学異方性がなくセラミックスでも高い透明度が期待できるY2O3を2つの方法で作製し、光学(透過率、α線発光スペクトル)及びシンチレーション特性(γ線励起波高値スペクトル、放射線励起Decay time、Non-proportionality, Energy resolution)を比較することにより、SPSは、セラミックスの高速作製の優位性だけでなく、透明セラミックのスクリーニングにも適していることを物性値を比較しながら議論する。
[実験方法] 真空焼結によるY2O3セラミックス(Fig. 1(a))は、硝酸イットリウムにアンモニア水を滴下して前駆体を合成後、1100℃で仮焼き、一軸成形、CIPにて等方圧成形を経て、1700℃での真空焼結により得られた。SPSによるセラミックス(Fig. 1(b))はカーボンダイスに市販粉末を入れ100MPaに加圧してパルス通電により1300℃で焼結した。表面はSEMにて反射電子を計測することにより観察し、光透過率をJasco 550スペクトルメーターを用いて測定した。241Amα線を照射して発光波長を調べた。パルス波高値スペクトルは、サンプルに各種(137Cs, 22Na, 60Co, 152Eu)γ線源を照射し、700Vの高電圧を印加した光電子増倍管(PMT)でシグナルを検知し、プリアンプ、波形整形アンプ(0.5μs)を経由後にパソコンでモニタリングした。Decay timeはPMTからのシグナルを直接オシロスコープで測定した。
[結果と議論]作製したセラミックスはFig. 1に示すようにどちらも透明度が高い。α線励起後に双方のセラミックスは350 nmで発光した。137Csγ線を照射してパルス波高値スペクトルを測定した所、真空焼結サンプルは発光量を7200 photons/MeV、SPSサンプルは5100 photons/MeVと見積もることが出来た。各種γ線源(137Cs, 22Na, 60Co, 152Eu)を用いてnon-proportionalityを求めたところどちらも非常に良好なproportionalityを示した。また137Cs照射後光電吸収ピークのエネルギー分解能は、真空焼結セラミックが18%で、SPSによるセラミックスが16%とほぼ同等であった。このように、SPSサンプルは真空焼結サンプルと遜色のない特性を示しており、高速作製という特徴だけでなく優れたシンチレーション特性を示す透明セラミックス作製にも適していることが分かった。