抄録
炭酸ジルコニウムアンモニウム(以下AZC)水溶液は、製紙、塗料等の分野で水溶性高分子化合物の架橋剤として利用されており、高い耐候性、安全性が特長である。特に昨今の安全性を重視する趨勢において、AZC水溶液に対する潜在需要は高まっているが、利用拡大には架橋性能の改良が必要である。我々はAZC水溶液の架橋性能がその溶存構造に起因するとの推定に基づき、AZC水溶液の溶存構造と架橋性能の関係を解明するため、[Zr]=1M(mol L-1)、[NH4+]及び[CO32-]を変化させたAZC水溶液の拡張X線吸収微細構造分析を実施した。また、これらの水溶液のポリビニルアルコールに対する架橋性能も評価した。その結果、特定の[NH4+]及び[CO32-]でZrに対する炭酸イオンの配位数が飽和したモノマー型の化学種が生成すること及びそのモノマー型化学種が架橋性能に優れることが明らかになった。