抄録
一般にペロブスカイト酸化物は超電導、強磁性、強誘電、イオン電導といった様々な物性を示すことから新規物性の発現が期待できる化合物として関心が寄せられている。我々のグループは混相ペロブスカイト構造を有する(Ba,Ca)TiO3:Pr3+において電場発光-電歪-応力発光という3つの異なる特性を1つの化合物で実現したことを報告し、多機能性セラミックス材料としても注目されている。これまでにアルミン酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩化合物等から数多くの応力発光体が開発されてきたが、応力発光体への多機能性の付加という観点からぺロブスカイト化合物に注目した材料開発研究が進んでいる。最近、我々はRuddlesden-Popper型ペロブスカイト構造を有するSr3Sn2O7:Sm3+が応力印加において強いオレンジ色の発光(応力発光)を示すことを新たに発見した。本研究ではこの新規物性を報告するとともに他の発光特性(蛍光、残光、熱ルミネッセンス)を評価し、その結果に基づいたSr3Sn2O7:Sm3+の応力発光プロセスの検討結果について述べる。