抄録
高純度酸化マグネシウム(MgO)のΣ5(310)[001]対称傾角粒界をモデル系として、電子エネルギー損失分光器(EELS)を搭載した球面収差補正走査透過型電子顕微鏡(STEM)と第一原理計算を駆使して、結晶粒界近傍における極微量不純物の所在と形成される微細構造を原子レベルで観察及び安定構造をシミュレーションした。高角環状暗視野(HAADF)像と原子分解EELSマッピングより、極微量の不純物であるカルシウム(Ca)原子とチタン(Ti)原子が同時に結晶粒界に偏析し、原子スケールで規則配列した自然には存在しない三次元構造(超構造)を形成していることが観察された。さらに理論計算によると、それらが複数の欠陥や電荷と強く結びついて、複雑な安定構造を形成し、焼結体の特性に大きな変化をもたらすことが明らかにされた。