日本PDA学術誌 GMPとバリデーション
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解説
知識管理に関するアンケート(2021年度)の結果と今後の課題
伊藤 伽奈子髙橋 志保北村 梨帆高松 紗絵子寶田 哲仁鳴瀬 諒子鹿野 真弓櫻井 信豪
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2022 年 24 巻 2 号 p. 23-31

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抄録

背景:国内では,先般,医薬品の不正製造に関する問題が頻発した。これら不正製造問題の原因の一つとして,製品ライフサイクルを通した知識の共有及び活用が十分に行われていないことが挙げられる。また,2021年には,改正GMP省令が施行され,医薬品製造業者は,「医薬品品質システム(Pharmaceutical Quality System:PQS)」を実効的に構築し,運用することが求められている。PQSの「達成のための手法(Enablers)」の一つである知識管理(Knowledge Management)は,PQSを実践するにあたり活用されるべき基礎的な概念であるとされており,PQSの導入と運用には,医薬品のライフサイクルの全般にわたり適用される「知識管理」の理解が有用である。

方法:国内製薬企業における知識管理の現状を把握し,課題を明らかにすることを目的として,アンケート調査を実施し,課題の抽出や結果の分析,考察を行った。

結果:得られた395回答から,知識管理そのものの考え方や目的に関しての理解は進んでいる一方で,知識管理の実践方法などに課題があることが明らかになった。また,技術移転時の知識の共有にも課題があり,これらが先般の不正製造問題にも関わっているのではないかと考察された。

結論:改正GMP省令への対応や不正製造問題の解決のためにも,各企業には実効的な知識管理の実践が求められている。そのためには個人レベルから組織レベルに知識を増大する体制が必要であるとともに,部門間を意識した知識共有のための知識伝達のプロセスを整備することが重要である。

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