本稿では,PETボトル無菌充填システムにおける非加熱滅菌システムの構築について解説する。現在,低酸性飲料向けPETボトル無菌充填システムでは,孔径0.2 μmのろ過滅菌フィルターはフィルターを通過する菌のリスクがあるため殆ど採用されていない。そこで,我々は12種のフィルター通過菌とBacillus atrophaeus胞子に対する紫外線(UV)感受性試験を行った。その結果,最もUV耐性が高かったのはBrevundimonas vesicularisであり,6LRVのUV照射量(254 nm)はB.atrophaeus胞子の約半分(67 mJ/cm2)であった。また低圧と中圧UVランプの殺菌性能を比較した結果,供した全ての菌株に対して,中圧ランプの方が高い殺菌効果を示した。次に中圧ランプを搭載したアトランティウム社のUV照射装置を用いて,指標菌B.atrophaeus胞子に対する滅菌性能を検証した。流量18 m3/h,UV照射量80 mJ/cm2の条件で試験した結果,指標菌に対し7LRV以上の滅菌効果が認められた。本結果より,中圧ランプとろ過滅菌フィルターを組み合わせた非加熱滅菌システム(呼称:グリーンアセプティック)を考案した。中圧ランプでフィルター通過菌を死滅させた後,ろ過滅菌フィルターを通過させることで加熱滅菌機と同等の無菌水を作製できる可能性が示唆された。液処理設備の脱炭素化が期待される。