Progress of Digestive Endoscopy
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臨床研究
急性出血性直腸潰瘍における内視鏡的止血術についての検討
野本 朋宏竹内 義明片桐 敦新井 勝人村元 喬久保田 祐太郎下間 祐矢野 雄一郎小林 祥也岩田 朋之大石 千歳宮下 みゆき魚住 祥二郎大森 理沙佐藤 悦基井廻 道夫
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2011 年 78 巻 2 号 p. 61-66

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抄録

【背景と目的】高齢化社会を迎えた現在,急性出血性直腸潰瘍(Acute hemorrhagic rectal ulcer,AHRU)の報告は増加している。当科にて経験したAHRUの臨床的特徴と内視鏡所見,ならびに内視鏡的止血術について検討した。【対象】2007年4月1日から2010年7月31日の期間,AHRUと診断された20例について後ろ向きに検討を行った。【結果】平均年齢は78.3歳(58~96歳),男女比は7:13で,高血圧や糖尿病,人工透析患者や癌の終末期患者など長期臥床の患者が多い傾向にあった。抗血栓療法は4例で施行されていた。内視鏡検査は血便出現後24時間以内に行われた。14例が多発,6例が単発潰瘍で,形態は13例が不整形潰瘍,5例はDieulafoy型潰瘍であった。20例中11例で露出血管が認められ内視鏡的止血術を行った。内視鏡的止血術の止血成功は9例(82%)であった。治療の内訳は,クリッピング単独が5例,APC焼灼単独が2例,HSE局注+APC焼灼が1例,EVLが1例であった。2例は内視鏡的止血が困難であり,1例は経肛門的に直接縫合が行われ止血が可能であった。もう1例はinterventional radiologyおよび外科的止血術を行ったが,術後他臓器不全に陥り死亡した。【結語】本検討におけるAHRUの臨床的特徴は既報とほぼ合致していたが,女性に多かった。露出血管を伴うAHRUの出血に対して,クリッピングやAPC,EVLによる内視鏡的止血術は有効であり,治療の第一選択になり得ると考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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