1993 年 42 巻 p. 124-128
われわれは1992年5月から腹腔鏡下腸管切除術を導入し,手技の工夫を加えながら3例に施行し,その有用性および発展性について検討を加えた。Ⅰp typeのS状結腸ポリープ癌のポリペクトミー後,癌断端遺残の症例に対して,腹腔内での機械吻合によるS状結腸切除術を施行した。さらに多発性のⅡa型早期大腸癌および回盲部クローン病に対して,腹腔外での側々吻合による回盲部切除術を施行した。腸間膜の処理には超音波メスを使用し,動静脈を露出した後に確実にクリッピングを行った。平均手術時間は5時間,1例は腸間膜からの出血により開腹術に移行した。全例とも術後経過は良好で,縫合不全は認めず,術後に急性心不全を発症した症例以外は,術後2週目に軽快退院となった。腹腔鏡下腸管切除術は,開腹術に比べ腸管運動の回復が早く,術創も小さく,術後疼痛も軽度であり,今後の発展が期待される有用な手術術式と考えられた。