1993 年 42 巻 p. 129-132
内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy : EST)を加えた経乳頭的総胆管結石截石術を施行した後の経過観察中に発症した胆囊炎が,胆囊と胆管を結ぶ胆囊管の形態に関連するか否かを,ERCPの胆道造影の形態から検討した。対象は1985年10月から1992年8月までにESTを施行し,経乳頭的に截石治療した総胆管結石症115例のうち,截石前後に胆囊を有していた71例である。これを胆囊炎発症例と非発症例に分け,年齢および胆囊管径,胆囊管合流部位,合流形式,螺旋構造の有無で比較したところ,胆囊炎発症例は70歳以下に多く,胆囊管径は非発症例に比べて太かった。合流部位,合流形式,螺旋構造には差はなかった。ESTを加えた胆道における胆囊炎の発症は,胆囊管閉塞による発症とは原因が異なる状況が考えられ,逆行性感染もその一要因と想定され,EST後も胆道内の細菌検索や胆囊機能の検索も必要と考えられた。