消化器内視鏡の進歩:Progress of Digestive Endoscopy
Online ISSN : 2189-0021
Print ISSN : 0389-9403
臨床研究
多発大腸癌の臨床病理学的検討
山谷 春喜横田 敏弘斉藤 大三白尾 国昭岸本 信三石堂 達也小黒 八七郎石川 勉牛尾 恭輔杉原 健一森谷 冝皓板橋 正幸廣田 映五吉田 茂昭
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キーワード: 多発大腸癌
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1993 年 42 巻 p. 118-123

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抄録

 1986年1月から1991年8月までの5年7ヵ月間に経験した,同時性多発大腸癌(以下,多発癌)55例122病変の内視鏡的・臨床病理学的諸性状について検討し,さらに同時期に経験した単発大腸癌(以下,単発癌)903例903病変との比較検討も行った。①多発癌の全大腸癌に占める頻度は6%であった。病変数では2癌の症例が86%と最も頻度が高く,深達度では早期癌のみからなる症例の頻度が56%と最も高く,占居部位では直腸・S状結腸の頻度が59%と最も高かった。②多発癌と単発癌の背景因子を比較検討した。性差は,多発癌は単発癌と比較して有意(p<0.01)に男性に多かったが,年齢では有意差は認められなかった。組織型は,多発癌は単発癌と比較して高分化型腺癌の頻度が有意(p<0.01)に高かった。他部位に腺腫を伴っていた頻度についても,多発癌は単発癌に比べてその頻度が有意(p<0.01)に高かった。また単発癌と進行癌のみからなる多発癌群とは,いずれの因子においても極めて近い値を示していた。③多発早期癌と単発早期癌の内視鏡的・臨床病理学的諸性状(性,年齢,肉眼形態,大きさ,占居部位,深達度および組織型)を比較検討した。有意差(p<0.05)が認められたのは形態のみであり,多発癌では単発癌と比較して隆起型(Ⅰp,Ⅰsp)の頻度が高かった。ⅠpあるいはⅠsp型の早期癌が認められた症例における,全大腸内視鏡検査の重要性が示唆された。

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© 1993 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
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